教員情報詳細
- 所属名称
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食物栄養科学部 食物栄養学科
- 資格
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教授
- 学位
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農学博士, 農学修士
- 研究分野
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①食品微生物学 ②食品加工学 ③生物資源利用学
- キーワード
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発酵食品、微生物、きのこ、食品開発、加工食品
- 社会貢献活動
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日本きのこ学会 会長(2015年4月~2019年3月まで4年間), 発酵と酵素の機能食品研究会 会長(2014年4月~2020年3月まで6年間), 西宮市大学交流協議会 運営委員会副委員長、地域連携推進委員会委員長(2011年4月~2019年3月まで8年間), たかしま発酵食文化カレッジ 学長(2014年4月~2017年3月まで3年間), ,大学基準協会評価委員(2007年4月〜2010年3月まで4年間)
本研究室では、きのこの発酵能を見出し、応用として清酒、ワイン、ビール、チーズ、味噌、発酵大豆、発酵豆乳、発酵梅、発酵肉、発酵豆腐などの新規な発酵食品を開発しています(1,2)。これらの発酵食品は、美味しいだけではなく、抗酸化活性、線溶活性、抗トロンビン活性が新たに付加され、心筋梗塞や脳血栓などの血栓症予防に効果を示します。このような健康維持・疾病予防を実現する新しい機能性発酵食品の開発を目指しています。この分野では、世界の第一人者です。
なお、2024年4月現在の業績は、著書・学術論文・総説278報、学会発表・ゲストスピーカー275回、特許11件、科研費など外部資金獲得66件、受賞5度(きのこ界のノーベル賞といわれる森喜作賞、日本きのこ学会の学会賞など)、新聞・雑誌・テレビ等105件(「世界一受けたい授業」出演など)です。
きのこの発酵能によって開発したアルコール飲料、チーズ、味噌について簡単に紹介します。
〔アルコール飲料〕きのこのアルコール発酵能を用いてワイン、ビール、清酒を生産しています。アルコール濃度は、ワインではヒラタケが12.2%で最も高く、ビールではマツタケが4.6%、清酒ではエノキタケが3.0%でした。アルコール発酵の際、きのこは酵母とは異なり菌糸体から二酸化炭素を発生することも見出しました。アルコール脱水素酵素の比活性と分子量を下記の図に示します(3,4)。〔チーズ〕通常、チーズは乳酸菌による乳酸発酵と仔牛の第四胃にあるレンニンあるいはカビ由来のムコールレンニンなどの凝乳酵素で製造します。本研究室では、乳酸脱水素酵素と凝乳酵素の両方を有するきのこが存在することを発見しています。きのこ菌糸体を牛乳に加え、発酵させるだけで、簡単にフレッシュタイプのチーズができることを報告しています(5)。〔味噌〕通常、米味噌は米麹と大豆と塩を原料として用い、こうじカビのアミラーゼとプロテアーゼ、耐塩性乳酸菌による乳酸発酵(乳酸脱水素酵素)と耐塩性酵母によるアルコール発酵(アルコール脱水素酵素)によって製造します。本研究室では、上記4種類の酵素を有するきのこを探索し、味噌の製造を試みました。製造された味噌は独特のきのこ風味を呈し、抗トロンビン活性や線溶活性など新たな機能性が付加されていました(6)。
1)松井徳光,きのこの発酵能による機能性食品の開発,日本きのこ学会誌,24,169-175,2017
2)松井徳光 他,カワラタケ菌糸によるきのこ麹を用いた発酵豆腐の開発,日本きのこ学会誌,30,116-120, 2022
3)Matsui T, et al., Discovery of alcohol dehydrogenase from mushrooms and application to alcoholic beverages., J.Mol.Catal.B: Enzymatic.,23,133-144,2003
4)松井徳光,きのこを用いた酒類の製造,日本醸造協会誌,97,766-773,2002
5)Okamura M.T, et al.,Characteristics of a cheese-like food produced by fermentation of the mushroom Schizophyllum commune.,J.Biosci.Bioeng.,92,30-32,2001
6)松井徳光 他,きのこを用いた味噌の製造,日本醸造協会誌,101,833-838,2006
(写真)G20新潟農業大臣会合(2019年5月)において、タイトル「発酵食品の多様性と共通性」で、 主催国である日本を代表して講演を行いました(農林水産省から依頼)。