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2024.10.22 現在

教員情報詳細

黒田 智子(クロダ トモコ)
クロダ トモコ 黒田 智子 Tomoko Kuroda
所属名称

生活造形学科

資格

教授

学位

工学修士、工学士

研究分野

近代建築論、近代都市論、デザイン方法論

キーワード

有機的建築、有機的都市、遠藤新、丹下健三、フランク・ロイド・ライト、パトリック・ゲデス、生命感の表現、日本の伝統文化、創作論

社会貢献活動

豊中市ふるさと納税返礼品のデザイン提案、西宮市津波啓発サイン計画のデザイン提案、農業の第三次化のためのデザイン提案

メールアドレス
  • 大学
  • tomokokrアットマークmukogawa-u.ac.jp
教育研究業績書

https://www.mukogawa-u.ac.jp/gakuin/gyoseki/pdf/id_15189.pdf

甲子園ホテルの理念と方法―「利他」からみえてくる遠藤新の建築表現

 武庫川女子大学の校舎として活用されている旧甲子園ホテル(1930)は、近代建築の巨匠フランク・ロイド・ライト(1867-1959)の愛弟子・遠藤新(1889-1951)の設計です。甲子園ホテルには、シンボルマークである打出の小槌をモチーフとした装飾が、建築の内外に配置されています。これらの装飾と建築の関係をみていくと、縁起が良いと信じられている打出の小槌が、ホテル経営の成功を表す「利己(自利)」だけではなく、他を利するための「利他」をも表現していることに気がつきます。打出の小槌によって豊穣の力が込められた水は、かつてホテルの南側にあった大湯池に流れ込み、さらに農業用水として周辺地域を潤していくのです。さらに「利他」の対象は遍く無限にわたり、大宴会場のインテリアデザインから、究極には世界平和を目指していると捉えられます。
 同時に、建築と敷地周辺との密接な関係を読み解く過程で、本学が位置する鳴尾地区には、今から約100年前、水系に大きな変化があったことが分かりました。それは、武庫川の支流・枝川と申川の止水による廃川です。それによって、暴れ川だった枝川は、巨大な線形の土地として新しく開発されることになり、それを特徴づける施設として甲子園球場(1924)も、甲子園ホテル(1930)も開設されたのです。同時に、同じく水害が絶えない武庫川の抜本的な改修が始まりました。鳴尾地区の長年の悲願だった河川改修はこうして実現し、甲子園ホテルの建築表現はそれを讃える祈りの表現と受け取れます。この時、新たな開発地の水道水と鳴尾地区の灌漑用水の水源は、近代ならではの電動ポンプで地下水を汲み上げることによって確保することになりました。枝川は無くなったけれども、その地下には豊かな地下水が流れているのです。
現在は、気候変動による集中豪雨による水害に備えて、2024年度から武庫川河口域で川底と護岸の改修工事が開始しています。100年後に廻ってきたこの大工事は、一方で、地下水の水質や水量に影響を及ぼす可能性があるため、鳴尾地区には多くの観測井が設置されています。水害対策に応えながら、どうやって豊富な地下水を将来に渡すのか、様々な学問分野の知恵を集めて考えていく必要があります。身近な水資源を守ることは、ひいては水の惑星地球の水環境を守り、世界の水紛争の要因を減らすことにつながるからです。

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