教員情報詳細
- 所属名称
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教育総合研究所
- 資格
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教授
- メールアドレス
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- 個人
- takeo_mmukogawa-u.ac.jp
PBL教育は、1960年代の後半から70年代の初めにかけて、欧米で医学教育を中心にProblem-based Learningが始まり、他方で工学教育を中心にProject-based Learningが開始された。1980年代以降、これらの2つの形態の教育はそれぞれ別々に広がっていったが、2000年代になると両形態の共通性に着目して展開する事例も生まれてきている。日本では、そうした海外の動向に触発されて、1990年代から医学教育及び工学教育を中心に導入され、2000年代には、取り組む大学が飛躍的に増加し、教養教育を含めて導入する幅が広がってきている。
PBL教育は、コンピテンシーをベースとするE2030(The OECD Learning Framework 2030)においてもカリキュラムや単元のデザインの方法としてその中核に位置付けられており(秋田2018)、これからますます効果を実証するエビデンスに基づくカリキュラムデザインが求められている。
私たちは、科研費研究補助金(代表 山田康彦24年度~26年度、平成27年度~29年度基盤(C))を受けた6年にわたる研究において、バフチン(Bakhtin, M.)の対話論に基づいた対話的事例シナリオを開発し、また同時に評価方法を開発することで、その教育効果を実証的に明らかにしてきた(山田他 2018)。対話をつくりだすことによる「観」の自覚と相対化、さらに「観」の変容を目的とする事例シナリオの開発において、新しいフォーマット(事例の紹介、定説(よくありそうな対応)の提示、定説に対する批判、定説に代わる実践例の提示)を策定し、ルーブリックによる評価方法の確立によって、教員養成の多分野における事例シナリオ教育の質を高めてきた。
この成果に基づき、2022年度からは、大学院研究科(臨床教育学)において、対人援助専門職を対象とした学生制作型の対話的事例シナリオ研究を行っている。
従来の授業研究は、授業が目的とする能力形成や教科内容習得に、手段としてどのような教材や学習活動が有効か、という目的─手段関係を基本枠組みとした視点をとる傾向が強かった。しかし、近年、教育方法学においては、授業の「技術主義的な把握」に対する再検討の機運が高まり、教師論としての教師のライフヒストリー研究とミクロな授業研究との間にクロスオーバー的な研究領域、すなわち「授業スタイル」の構築を教師のライフヒストリーの文脈の中で理解しようとする研究領域が成立してきている(森脇 2004)。この流れは、1980年代の「新しい」教育社会学の誕生とともに生まれ、教師論研究としての教師のライフヒストリー研究としてその一翼を担ってきた(高井良健一1995)。その成果に学びながらも筆者の問題意識は、教師個人の授業変革史、とりわけ教師の実践経験と「観」の形成、「授業スタイル」の変革の過程をライフヒストリー的アプローチをとることによって明らかにすることにある。そこで得た一つの仮説は、「観」の形成、「授業スタイル」の変革の過程は、できごととの出合い、あこがれ、そしてこだわりによって促進されること、そして「観」と「授業スタイル」の形成が同時に進行することである。
教師の実践力量の形成をライフヒストリーアプローチを用いて明らかにする試みは、二十年にも及ぶ研究史を持っている。主に熟練教師を対象に授業スタイルと観の形成という仮説に従った研究を重ねてきたが、学校教師だけではなく、日本語教師(海外における日本語教師)にも研究対象を広げてきた。
2022年度からは大学院研究科(臨床教育学)において対人援助専門職の専門職としてのライフヒストリー研究に広がってきている。
21世紀に入り、学力問題が大きなトピックとなったのをきっかけに授業研究も大きく変わってきている。日々行われる授業において、教育内容の理解と定着をはかっていくかがあらためて問われている。その中で筆者は、めあて・ふりかえりの焦点をあて、これまで10年あまり授業研究・授業分析を進めてきた。
現在、教育委員会の研修、あるいは学校との共同研究の主なテーマは資質・能力の形成と授業づくりという点に焦点化されている。